side of SAYO

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「お。霊視ゴーグル安くなるじゃん。今のやつ調子悪いから買い直そうかな」 「あたしはお札補充したいなー。この前使いまくっちゃってあと5枚しかないの」 そんな会話をしながら、わたしの横を一組のカップルが通り過ぎて行く。ちらりと視線を彼らに移すと、2人の身にはそれぞれ霊能アイテムが多数装着されていた。 まるでファッションの一部だ。人々はさも当たり前のように霊能アイテムを身につけ、歩いている。 霊能アイテムはこんなにも近くにある。わたしは嫌悪感に眉を寄せた。 「サヨ。お待たせ」 後ろから名前を呼ばれ、わたしは静かに体の向きを変えた。その先に、見慣れた兄の姿があった。 スッとした長身にラフなジーパンスタイル。大きなリュックを背負い、右肩からはパンパンに膨らんだボストンバッグを下げている。 「手続きは終わったの?」 「何とか。車掌さんがいい人でよかったよ」 わたしの問いに兄さんは苦笑いで答えた。列車の中で切符を紛失してしまい、ホームの管理室で再発行の手続きを行っていたのだ。 やれやれ。これから新居へ向かうと言うのに先が思いやられる。
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