第1章

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彼の身体は決して温かくはなく、 雨の臭いがした。 どうして彼を抱きしめたのかは分からない。 離れようという思いは、 頭に一度も浮かんでは来なかったと思う。 それにもう、離れることなど出来るはずもなかったのだ。 何故なら、 彼の腕も私を包んでいたから。 それからしばらく私たちは黙ったままでいた。 寒いからなのか、 それ以外の理由なのか。 私は震える彼の肩を ただただ抱きしめることしかしなかった。
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