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上田屋は京の北にある小さな宿だ。通りに面して構えている入り口は決して立派とはいえない。
ここに新人とはいえ6人もの隊士が集まれば逃走は困難であろう。私とミックは裏にある通用口が見える裏手の宿のその屋根に潜み隊士の討ち入りを待った。
「蓮、どうせ今日は大した仕事にはならん。俺はゆっくりさせてもらうぞ。」
そう言ってミックは屋根の上に寝そべった。
「どうぞ…」
私は通用口を見据えたままそう答えた。
ミックが寝息をかきはじめたころ上田屋の前が慌ただしくなった、そして二人の隊士が通用口の前に駆け付けた。
「ほう、ちゃんと解ってるじゃないの。」
ミックが寝そべったままそれを眺めていた。
「始まるぞ…」
そう言って銃を構えたとき
「御用あらためである。亭主はいるか‼」
威勢のよい大きな声が辺りにこだました。
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