パティシエになる、その時。

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小麦粉、砂糖、ベーキングパウダー、苺、バター、生クリーム、ミルク、ミントやセージといった香草、シナモン等の香辛料…あっという間にリヤカーは一杯になった。 魔導リヤカーは引いている人間の『体力』と呼ばれているそれを少しずつ消費し、重さを軽減してくれる。これが農作業用の安いリヤカーだったら、小麦粉の重さだけで崩れていただろう。 「うぅ、重くなってきた…」 家まではあと少し。必死に坂道を登り、なんとか玄関前まで辿り着いた。 が、ここからは自分の力で家の中まで材料を運ばなければならない。 「た、ただいま…マ、お母さん、何か…何か無い?体力が…」 「あら、お帰りなさい。そう言うと思って、作っておいたわ。はい、イチゴタルト。」 嫌みの様に出されたイチゴタルトは、ころんが学校で練習している、『イチゴタルトによく似た何か』とは全く違う、『最高のイチゴタルト』だった。焼き加減、ツヤ、甘さ加減、苺の瑞々しさ。何もかもが違う。 「…おいひぃ…」 だらしのない顔で幸せに浸るころん。だがそこへ、容赦無い『授業料』の催促が。 「さ、早く食べて材料の運び込み、お願いね。」 「…ハイ…。」
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