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『俺、三太夫のせいでまたとんだ地雷踏んじまったかな』
佐助は明らかに落ち込んでいる。
『そう肩を落とすな青年。そうじゃ!
わらわが人になればおぬしも少しは気が楽になるじゃろう。
待っておれ。すぐに変幻するからの』
そう言って神社の境内に消えて行ったと思えば、
すぐに変幻して二十ぐらいの美しい女性になって帰ってきた。
『どうじゃ?少しは気が楽になったじゃろ。それにしても女子(おなご)になるのは久方ぶりじゃのう』
そんなことを言いながらよほど嬉しいのか銀髪の女性は小さな子供のように体をくるくる回している。
彼女は佐助の想像を遥かに超えた美しさで、長い銀髪、狐耳と一本の尻尾に澄んだ蒼い眼をしており凛々しい顔立ちだった。
『ふざけんな!気が楽になるどころか逆にやりずれぇわ!』
ふと銀髪の女性は佐助に反応して喜びの舞を止めた。
『どうしてじゃ?女子のほうが話しやすいだろうに?』
彼女は本当に不思議そうに見つめてくる。
『どうしてもなにもその…なんだ……綺麗すぎるのも心臓に良くない…ていうかなんというか』
『ふふっそんなことか!
そりゃわらわの美貌を見て二十そこそこの青年がなんとも思わないほうがおかしな話じゃな』
確かに健全な男子なら綺麗な女性が近くいるとドキドキしてしまうのは当たり前である。
『えらい自信満々なんだなあんた…』
どうやらこのお狐様は自身の美貌を自負しているようだ。
『わらわは大神狐じゃからな』
『ちょっと意味がわかんねえけど凄い偉いことだけはわかったよ』
ようするに最も神に近い狐ってことらしい。
『今はそれだけ分かればいいじゃろ。そういえば自己紹介がまだじゃったな。
わらわは劉幻じゃ。好きに呼んでくりゃれ』
『劉幻ってまた伝説みたいな名前だなー』
佐助がそう思うのも当然。
なにしろ劉幻という名は実際に中国の人々から伝説的に呼ばれているだけなのだから。
『えっーと…俺は五代目猿飛佐助だ。』
『ああ。知っておる。実は一目見た時から気付いておった。
なにを隠そう佐助。
おぬしの先祖にわらわは封印されたからな』
急に劉幻の目つきが真剣になり始めた。
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