第1話①「軽々しく《S》を口にするな!!」

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「ちょっと待ったぁあああ!!」 その劈く様な叫びと共に、バンッと勢いよくトイレの入り口の扉が開かれる。 皆が茫然と目を見開くその先には……白衣の男の姿が見えた。 少し色素の薄いサラサラの髪と、真っ白な白衣を靡かせたその男は、刺す様な鋭い眼差しを佐藤さんに向けている。 「……高坂……先生」 そう佐藤さんが名を呼ぶと、高坂先生は佐藤さん、田中さん、鈴木さん……そして私へと、ゆっくりと視線を動かした。 「君達は《S》とは何なのか、ま………………………ったく分かっていない!!」 「……は?」 そう拳を握り締め声を上げた彼を茫然と見つめたまま、佐藤さん、田中さん、鈴木さん、そして私の口から気の抜けた声が漏れる。 「SMは只の暴力ではない!!肉体的苦痛を昇華させ、精神的快楽へと導く尊い行為である!!深い信頼の元、心を通わせ合う……それこそが真のSM!!」 先生はそう力説すると、それから佐藤さんを真っ直ぐに見つめた。 「そんな事も知らない君が、軽々しく《S》を口にするんじゃない!!」 そう言って先生は佐藤さんに向かってビシッと指を差すと、咎める様な視線を佐藤さんに向ける。
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