1140人が本棚に入れています
本棚に追加
第1話①「軽々しく《S》を口にするな!!」
甲高いチャイムの音と共に、黒く大きな門をくぐり抜ける。
そっと空を見上げればそこには眩しい太陽が光り、私の薄暗い心とは豪く対照的で思わず溜息が洩れた。
制服姿の学生達の溢れる中庭を抜けると、白と黒で統一された近代的な校舎が姿を現す。
……私立・鼈丸鍋(すっぽんまるなべ)学園。
通称と呼ばれている……私の通う高校だ。
文武両道を掲げ、生徒のレベルは高いとされている、この地域では有名な学園。
設備の整った美しい校舎に優秀な教師、それから部活動も盛んで……かなり人気の高い学校だ。
私もそんな理想的な学校生活に憧れ入学したが……今ではその事を深く後悔している。
この学園に入ってから癖になってしまった溜息を吐くと、そのまま校舎の中へと入って行った。
ガヤガヤと騒がしい廊下を身を竦める様に歩きながら、自分の教室を目指す。
しかしその一歩がとても重く、全く前に進む気がしない。
……行きたくないな。
そんな考えが頭に浮かぶが、それを無視してフラフラと教室を目指した。
最初のコメントを投稿しよう!