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それから暫く……沈黙が続いた。
誰も話し出さないまま、ポカンと口を開き、ただ茫然と先生を見つめる。
……高坂……千尋先生。
SM学園の養護教諭兼校医で、生徒、教員問わず信頼の厚い人。
無駄なぐらいに整った顔に、モデル並みのスタイル。
某国立医大を首席で入学・卒業後、医師免許取得。
研修医時代には誰も希望しない様なマイナーな科を廻り、各医局で引く手数多の中、何故か私立高校の養護教諭になった変り種。
頭脳明晰、眉目秀麗、スポーツ万能、そして何より……性格がいい。
そんな小さなシミ一つもない素晴らしい経歴の彼が……
そこまで考えてゴクリと息を呑んだその瞬間、動いたのは鈴木さんだった。
「……な、何なの!?」
鈴木さんはそう呟き、気味の悪いモノを見る様な目で先生を見ると、そのまま駆け出し廊下へと飛び出していった。
「あ、待ってよ!!」
走り去った鈴木さんの後を、慌てて田中さんが追って行く。
一人残された佐藤さんは暫く呆然とその場に立ち尽くしていたが、次の瞬間、静かに私を振り返った。
「先生にチクッたら許さないから」
そう吐き捨てる様に佐藤さんはそう言うと、そのまま二人と同じ様に先生の横を抜け、廊下へと飛び出して行った。
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