第1話①「軽々しく《S》を口にするな!!」

8/9
1139人が本棚に入れています
本棚に追加
/342ページ
それから暫く……沈黙が続いた。 誰も話し出さないまま、ポカンと口を開き、ただ茫然と先生を見つめる。 ……高坂……千尋先生。 SM学園の養護教諭兼校医で、生徒、教員問わず信頼の厚い人。 無駄なぐらいに整った顔に、モデル並みのスタイル。 某国立医大を首席で入学・卒業後、医師免許取得。 研修医時代には誰も希望しない様なマイナーな科を廻り、各医局で引く手数多の中、何故か私立高校の養護教諭になった変り種。 頭脳明晰、眉目秀麗、スポーツ万能、そして何より……性格がいい。 そんな小さなシミ一つもない素晴らしい経歴の彼が…… そこまで考えてゴクリと息を呑んだその瞬間、動いたのは鈴木さんだった。 「……な、何なの!?」 鈴木さんはそう呟き、気味の悪いモノを見る様な目で先生を見ると、そのまま駆け出し廊下へと飛び出していった。 「あ、待ってよ!!」 走り去った鈴木さんの後を、慌てて田中さんが追って行く。 一人残された佐藤さんは暫く呆然とその場に立ち尽くしていたが、次の瞬間、静かに私を振り返った。 「先生にチクッたら許さないから」 そう吐き捨てる様に佐藤さんはそう言うと、そのまま二人と同じ様に先生の横を抜け、廊下へと飛び出して行った。
/342ページ

最初のコメントを投稿しよう!