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外に出ると、沙耶は声を出して泣きはじめた。
しがみついている腕を通して、沙耶の不安が伝わってくる。
おれは沙耶を抱く手に力を込めながら、自分の中で何かが音を立てて崩れていくのがわかった。
近くに停めてあった車に乗り込み、沙耶を助手席に座らせる。
「ねえ、どうするつもりなの?」
理子が後部座席に乗りながら訊いてきた。
「とりあえず、アジトまで連れて帰る」
「本気なの? 連れて帰ってどうするつもり? まさか、一緒に暮らすなんて言わないわよね?」
「……」
その質問には答えず、車を発進させた。
ハンドルを握りながら、横ですすり泣く沙耶を見て、おれはある決心を固めた。
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