128人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、どうするつもりなの? 『盗み』をやめて普通の暮らしをするだけでも難しいのに、その上赤の他人の女の子を引き取るなんて」
たしかに、普通に考えれば無謀な話だ。
普通、養子をもらうにはいろいろ手続きが必要だし、ましてや元盗人がこの子を養子にするなんて、まず無理だろう。
だが、おれにはある考えがあった。
「実は、ちょっと考えがあるんだ。上手く行けば、普通の暮らしも手に入れることができる。それより、お前はどうする?」
おれは、理子がおれと組む前、どこで何をしていたか知らない。だが、ヴァンパイアが普通にOLをしていたとは考えにくい。
「あたしの目的は知ってるでしょう?」
「目的って……冗談じゃなかったのか?」
「冗談なんかじゃないわよ。あたしはね、クロウと結婚するって決めてるの。だから、どこまでもあなたについて行くつもり。それに、小さな女の子には母親が必要でしょ?」
理子はソファーで眠る沙耶を横目で見ながら言った。
まだあどけなさの残る顔で母親はないだろうと思ったが、見た目とは違い年齢は500歳以上だったことに気がついた。
「まぁ、好きにしろ」
おれはそう言って缶コーヒーの残りを飲み干した。
ヴァンパイアになる気はさらさらないが、理子がついてきてくれるのはうれしかった。
最初のコメントを投稿しよう!