5年前

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「なるほどね。それがあなたの考えってわけ」 カーテンを閉めきった薄暗い部屋から、理子の声が聞こえてきた。 「ああ。このリストは、これだけでは意味が無いかもしれないが、他の情報と組み合わせればパズルのピースを組み合わせるように大きな犯罪へとつながっていくはずだ。やつらからすれば、きっと欲しいに違いない」 「でも、クロウ。それを渡したらあなた、もうこっちの世界には戻って来られないわよ?」 「かまわないさ。真っ当に働くのも、案外いいかもしれないしな。それより、お前はどうする? 一緒に新しい戸籍を用意させるか?」 500年前から生きている理子に、そもそも戸籍なんてないだろうが、一応訊いてみた。 「あら? あたしをあなたの戸籍に入れてくれるの? それはそれでうれしいけど、やっぱり遠慮しておくわ」 だろうな。悠久の時を生き抜くヴァンパイアにとっては、戸籍なんて邪魔なだけだ。 「わかった。用意させるのはおれとこの子……沙耶の分だけにしよう」 見ると、沙耶は泣き疲れて眠っていた。 この子が全てを受け入れ、笑って暮らせるようになるまで、おれが手助けしてやろうと思った。 それが正しいことなのかどうかはわからないが、そう思わずにはいられなかった。
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