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「そんな屁理屈どうでもいい。コーヒー頼む」
「ヴァンパイアにコーヒー入れさせるなんて、世界中探しても所長くらいなもんね」
「ヴァンパイアだろうと鬼婆だろうと、うちで雇っている限りはただの従業員だ。文句言ってないでさっさとしろ。コー……」
「コーヒー少なめミルク多め、砂糖は2杯でしょ? 毎日やってりゃ、さすがに覚えるって」
最後まで言い切らないうちに理子が続ける。
「ついでに、あたしの血も少し混ぜようかしら?」
インスタントコーヒーの蓋を開けながら、理子が聞こえるように言った。
「それは遠慮しておく」
即座に答える。
ヴァンパイアの血を飲むと飲んだ人間もヴァンパイアになる。
こいつは、おれをヴァンパイアにしたいらしい。理由は……。
「いいかげん、観念してあたしと結婚しなさいよ」
500歳のババアのくせに、夢はお嫁さんになることだそうだ。
その相手として、おれに白羽の矢を立てたというわけだ。
この500年間、ヴァンパイアになりたいと寄ってきた男は好みじゃなくて、好みの男はヴァンパイアにはなりたくない、といった具合に、結婚相手に恵まれてこなかった……らしい。
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