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「そのうち、こっそりと入れてやるんだから」
そう言いながら、その気がないのはわかっている。やるなら、とっくにやっているはずだ。
騙してヴァンパイアにするのではなく、自分の意志でヴァンパイアにならなければ意味が無い。
そうでなければ、その後の幸せな結婚生活など営めるはずがないからだ。
「やれるもんなら、やってみろ。一生恨んでやるからな」
理子の気持ちをわかっていながら悪態をつく。
いつも繰り返される恒例のやり取りだ。
「おばさん、またそんなこと言ってるの? いい加減諦めたら?」
部屋の入口に少女が立っている。
烏森沙耶(からすもりさや)。5年前、おれが引き取ったときは5歳だったから、もう10歳になるのか。
戸籍上はおれの娘ということになっているが、もちろん血はつながっていない。
それに、おれは父親というものがどういうものかよくわからないし、わかるつもりもない。
沙耶もそれをわかっているので、おれを「お父さん」とか「パパ」とは呼ばない。
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