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もう辺りを充たすのは殺気しかない。息をするのも苦しい重圧感の中、ジリジリと輪が狭まっていく。
あぁ、逃げられる気がしない。立ち向かうにも丸腰だから手段がない。チラリ、唯一の逃走方法を閃いて一瞬だけ視線を落としたら永倉がニヤリと笑った。
「砂で目潰しとか考えんなよ?その前に三枚におろしてやるよ」
彼は何でこんなに洞察力が鋭いのか。
万事休す、もう手がない。このまま殺されてしまうのか…?だったら島原で楽しいコトをシてから死にたかったなぁ…。あと、読んでない医学書読んでからがいいなぁ…それまで待ってくれないかなぁ…。
こんな時に現実逃避。図太いなんて話ではなく、ただの無謀だ。
ユラリと沖田が動いた。刀身が半分まで姿を現して輝く。その、背後に。山崎は……見た。
「とおおおぉぉぉおおおう!!!!」
砂煙を引き連れた小夜の姿。豆粒大だったはずのそれが瞬きの間に至近距離までやってきていて、そのまま沖田に抱きついた。
「グハッ!!うわ、ぇ、小夜!?危ないじゃない刀抜いてるんだよ!?……って、何でいるのッ!?」
「藤堂さんと斎藤さんに聞いたんです!!皆して山崎さんを苛めて!!」
殺人の間違いだろう、山崎は遠い目になる。
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