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「……テメェ誰に向かってほざいてやがる」
永倉の言い草にさすがにカチンときたのだろう、土方は鬼の形相で永倉と沖田の手を掴んだ。抵抗した二人だが土方の迫力に怯み、短い攻防の末少し離れたところに連れていかれた。
何の話をしているのだろうか。何やらゴニョゴニョと話し合っている三人を眺めながら、突然放置されてしまった山崎と小夜は小首を傾げる。もう帰ったらいけないだろうか。
こっそり半歩後退ったちょうどその時、運悪く三人は戻ってきてしまった。
「そういや、言われてみゃその通りだよな。ほら小夜、さっさと山崎と仲直りしておれのとこに帰ってこい」
「永倉さんの小夜じゃなくて僕の小夜ですけどね。まぁ確かにさっさと仲直りすれば小夜が山崎さんのことばかり考えずにすみますし。僕の小夜が他の男のことばっかり考えてるなんて、寛大な僕が何とか堪えてもこの右手が堪えられそうにないですし」
そういうことか。沖田の発言に土方が何を意図していたのかようやく知った。あの傍若無人の鬼、ただ小夜が振り向いてくれないからって嫌がらせしたかっただけだ。
もしかしたらその余計な慧眼で、山崎がしばらく何も行動を起こさないつもりなのも見抜いていたのかもしれない。
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