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ホギャ-ッ
ホギャ-ッ
元気な赤子の声が聞こえると緊張した男性の表情がフッと緩んだ
程なくして病室に移った所で勢いよく扉を開けて入る男性
男性は妻である女性に労いの言葉をかけた
「よく頑張ったね‥お疲れ様」
本来なら疲労感はあるものの笑顔を向けても良いはずの妻の表情は沈んでる
理由を聞こうとした時に、おとなしく寝ている双子の赤子を抱いた看護師が入ってきた
但し赤子を抱いている看護師の表情もやや暗い
嫌な予感がする
頭の中で警鐘が鳴る
警鐘の理由を思い出した瞬間…
「まさか!?…」
予想は‥嫌な方に当たっていた
「1人に---がありました」
一瞬…目の前が暗くなった
我が子と世界…いや比べること事態おかしい話だ
英雄たちが築き上げた平和を自分のエゴで壊す訳にはいかない
「--のある赤子は?」
「此方です」
少しふるえながら--のある赤子を差し出す看護師
「ありがとう」
男性は優しく我が子を抱きよせた
胸元を見ると確かに---があった
絶望に捕らわれたのは一瞬、ふと妻の視線に気づいた
その瞳には涙を溜めつつも、ある種の決意が込められていた
《私も当主としての責務を果たさなければならぬか…》
-転移-
次の瞬間、男性は我が子の1人を抱いて転移した
病室には突然、火がついたように泣き出した赤子の片割れと赤子をあやす看護師
そして頬を涙で静かに濡らす赤子の母親が残された…
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