江戸子守唄

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泣き止まない赤ん坊への殺意 少女の両手は、まだ生まれて間もない赤ん坊の首にかかっていた。赤ん坊はあらん限りの力で泣き叫んでいる。昼なお暗い、誰も立ち入ることのない山の小径。赤ん坊の紅潮した頬を涙がつたい、紅葉のような手は空をかきむしるようにバタついている。しかし少女には何も見えていない。赤ん坊の首にかけられた両手に徐々に力が入る。少女の指先が柔らかい皮膚に食い込む。この耳につく泣き声を止めるにはこうするしかない…。少女はぼうっとした顔で、不思議と冷静に考えていた。
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