6人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
「兄貴ーあーさーだーぞー」
「朝は……可愛い女の子で……」
「妄想を抱いたまま溺死してくれ」
俺の夢は軽く打ち砕かれた。
仮に可愛い女の子の幼なじみや友人がいたとして、その子に朝起こして貰った場合でも俺は起きないだろうな。俺は目の前の欲望、即ち睡眠を優先するだろう。
「兄貴、妄想に耽ってないで学校行くぞ」
「俺にはゆっくり妄想に耽る権利もないのか! あと朝食も」
「お前にそんな時間ねーから」
何この弟鬼じゃね?
てか、マジで時間ないのな。さっさと着替えて家を出ないと入学式に間に合わない。
いっそジャージのままでも……止めておこう。さすがにそれはないな。
馬鹿なことを考えつつも素早く着替えを済まし、コップ一杯の牛乳だけを胃に流し込み、母親に挨拶をして弟のタクと共に家を出た。
よしよし、ここまではスムーズに進んだな。残るは学校へ向かうだけだが、ここで問題を起こしてはならない。朝食を抜いて支度をしたから時間には多少の余裕が出来たが、道草を食うほどの余裕まではないのだ。
「タク、今日はアイツどうするって言ってた?」
俺は隣を歩いている弟の巧人へ話しかけた。
「アイツってあのバカのことか?アイツなら昨日の夜にメールで『明日って何時から?』って聞いてきたから、『明日は九時半からだ』って返した」
……こいつひでぇ。
学校が始まるのは九時。当然入学式が始まるのも九時からとなる。結果、いきなり遅刻をするハメとなった。
「九時半だとちょうど校長の話があるくらいだな」
「それくらいだな」
新学期でクラスが変わるというのに、アイツはまたもバカキャラポジションにつくんだな。
……思いっきりざまぁって笑ってやろう。
最初のコメントを投稿しよう!