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しかし、これで遅刻をする要因は大分減ったことになる。遅刻の大半はあのバカによる無駄な行為だからな。
「いやー、アイツがいないとゆっくりでぶっ!?」
突如背中に衝撃があり、その弾みで顔から電信柱にぶつかってしまった。
は、鼻が折れる……。
「ごめんなさいね。貴方が邪魔だったから思い切り蹴飛ばしてしまったわ」
地面にうずくまっていた為相手が誰かは判らないが、どうやら声の主は女性のようだ。随分とアグレッシブだが。
俺が顔を上げたときには既に女性は立ち去っていた。
「俺……あの人の恨み買うようなことしたかな……」
「兄貴運悪いから仕方ないんじゃね?」
結論だけ言えば運が悪かった。その一言で解決するのだ。俺は周囲に認められる程の不運の持ち主なのだから。
とはいえ、いくら不運だからっていきなり女性に蹴られるってのはねぇ。俺が気づいていないだけで、知らぬ内に傷つけてるなんて事も……ないんじゃね。
まず女性と接触する機会なんてクラスの連中くらいだし。
「タク、今の人に見覚えあったか」
「黒髪ロングの美人を兄貴は知ってるのか?」
「次元の向こうでなら」
「ゆっくりデブれ」
「何ゆっくりデブれって!? あれは背中を蹴られた衝撃で言葉が途切れただけだからな!? てかゆっくりデブれって単純に太っていくのと同じだろ……」
「気にしたら負け」
わーい、弟がやたら冷たいよーう。
あ、タクは朝は機嫌悪いんだったな。
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