36人が本棚に入れています
本棚に追加
それを怪しいと思った男はね、自分が浮気してるのを棚に上げて、『女が浮気してるんじゃないか、ならばその証拠を掴んでやる』なんて思ったんじゃない?その日も、仕事で遠くへ行くなんて言って出て、実際は庭の植え込みに隠れて探っていたんだ。
「最低な男だな!!」
「そうだね。でもその当時はよくある話だったんじゃないかな?」
「だとしてもだ!!」
植え込みに隠れて待っていると、綺麗に化粧をした女が出てきた・・・でね、その人、男の身を案じるような内容の歌を詠むんだ。
男はそりゃあもう感動したんだろうね、そんな女のいじらしい姿にとても『かなし』くなって、愛人のところに行くのをやめたんだ。
「おい。」
「なに?」
「『かなし』くなったってどういう意味だ?だって、」
「あぁ、『かなし』いってのはね、『愛し』いって書くんだ。日本語って素敵だよね。」
「そうか?」
「先輩には難しいかな。」
最初のコメントを投稿しよう!