かなしい人

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良太郎に貸りた本にあった昔話だよ。 あるところに、男女がいてね・・・って、まぁ、いても不思議はないのだけれど。 二人は幼馴染みで、お互いに想い合い、そりゃあ色々あって結ばれたわけなんだけど・・・ 「あれ、何を以て『結ばれた』と言うのだろう?」 「いいから続きを話しやがれ。」 「はいはい。」 大人になって結ばれたはいいけれど、当時は女性の親が頼りなんだよね・・・でも親って普通、先に死ぬものでしょう?その女性の親も例外ではなく、二人の愛は冷めてしまうわけ。 「あんなに情熱的な歌をおくり合っていたのにね。」 「男なら自分で稼いでこいっつうの。」 「そういう時代もあったんだよ。」 「なんでも時代や社会の所為にすんじゃねぇよ。」 「あれ、珍しくまともなこと言ってる。」 「う、うるせぇ!!」 「じゃあ続きいくよ?」 そんなこともあって、男には新しい女ができるんだ。それはもう、頻繁に通っていたようだね。 でも、奥さんになった幼馴染みの女は、浮気のことなど知らぬ素振りで毎回送り出す・・・知らない筈がないのに。
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