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その日はある小学校の卒業式だった。
別に大きくも小さくもない普通の小学校。
そんな小学校の校門に一人の少年が立っていた。
まだ幼いその少年は不機嫌そう口を真っ直ぐに結び、頻りに足の爪先でコツコツと音をたてていた。
胸に紙で作られた花を付けていることから卒業生なのだろう。
「……遅いなぁ。早く来ないと卒業式始まっちゃうよ」
恐らく両親でも待っているのだろう。
少年は来るのが遅い両親が心配になって校門まで迎えに来たのだ。
少年が時間を確認しようと顔を校舎に向けた直後に声が聞こえた。
「おーい!廉人!こっちだ!」
少年が急いで振り返るとそこには40才位の男性と女性が道路の向こう側で手を振っていた。
「もぉ、遅いよ!二人とも!早くしないと卒業式間に合わないよ!」
少年がそう両親を急かすと父親と母親は急いで道路を渡り始める。
「ごめんねぇ!今そっちに……」フアアァァン!
母親の言葉を遮りクラクションの音が響く。
「……父さん!母さん!」
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