鬼と呼ばれた少女

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ここは私たちが住む世界。ここに古びた孤児院がある。そこに高校の卒業を控え、これからの人生について悩みを抱えている少女がいた。 名を『寿 汀』。 彼女は高校を卒業し、働いて自立しようと考えていたのだが、新たな生活に不安を抱いていた。 「汀も、私も、もうすぐ高校を卒業だね。」 後ろから長髪で、眼鏡が特徴的な汀の友人『椿 雫』が机に臥せっている汀に話しかけてきた。 「いざとなると怖いわね。雫はここで恩返し……離れ離れか……」 「また、そんな弱気を…私が知っている汀はそんな弱音は吐かないわよ?」 雫は汀の背中を二回叩いた。 ………… どこにでもある二人の会話を覗く影があった。 直接覗くのではない。水晶の様なもので二人のやり取りを見ている。 「またその娘の監視ですか、紫さま?」 水晶を覗く彼女の名は『八雲 紫』。その彼女の式神である『八雲 藍』は主である紫に尋ねた。 「ええ、貴方も知っているでしょう?この娘の正体を……」 「はい。数日前に紫さまから教えて頂きましたから……」 藍は洗濯物を丁寧に畳むと、襖の向こうに置いた。
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