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「彼女は人間じゃないわ。うまく化けているつもりでしょうけど……わずかに漏れる妖気は隠しきれないわね……」
紫の口の両端がわずかに上がった。藍は仕事を終わらせて紫の対面に座った。
「そもそもこの娘は自分がどのような存在であるか理解しているんですか?」
「していないわね。だから……」
紫が藍を見つめた。
藍はとっさに目をそらせた。今の紫の目は、必ず自分にきつい仕事を任せる時の目だからだ。
「何故目をそらすのかしら?」
「また何か無茶をお考えなのでしょう?」
「あら、さすがは私の式ね。察しがいいじゃない♪」
大きくため息をつく藍。どのみち拒否はできない。そう悟った藍は重々しく頭をあげた。
「そんなこと、湖上の氷精でも察しがつきます。で、何をすればいいのですか?」
嫌々な顔で答える藍に、紫は扇子を広げて口を隠し、優雅に言った。
「外の世界に行くから、結界の監視をヨロシク……」
「(……いつものことじゃないですか……)わかりました。お任せください。」
藍はため息をつくしかなかった。
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