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「……術で簡単な金縛りの状態にしたつもりだったんだけど……。さすが、この程度じゃダメね。」
はじかれた腕を撫でながら、紫は怯える汀に目をやった。
汀の体からは僅かではあるが、黙視できる程度の妖気が漏れていた。
汀は興奮しているためか、そのことに気づいていない。
「私の妖気に当てられたのかしら?」
「何なのよ……あんた……」
紫は扇子を広げ、汀を見て微笑んだ。
「私は妖怪よ。貴女を神隠ししに来たの。絶滅寸前の呪鬼の少女さん。」
紫はしゃがんで怯える汀の頬を撫でた。
「私が鬼?何言っているの?鬼って言うのは角が生えていて、凄くムキムキなのよ?」
紫の手を払い除ける汀。
「鬼にどんなイメージを持っているかは知らないけれど……あなたは鬼なの……否定したい気持ちはわからなくはないけどね」
紫はスッと立ち上がり、汀から離れた。
「力を封じられていたとは言え、鬼は鬼ね……気を抜いていたわ……」
汀が紫の腕を見ると火傷の痕のような傷が入っていた。
「さすがは呪鬼ね。しばらくは大人しくしておくわ。また会いましょう。汀……」
紫はそう言うと隙間を作って消えていった。
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