ーあー

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初めてアイスを食べたのはいつだろう 当然覚えている訳がない どんなに記憶をさかのぼっても思い出せるのはせいぜい幼稚園の少し前ぐらい 私の記憶のタンスはどうやら容量が少ないらしい 楽しい思い出はすぐに追い出されてしまう厄介なタンスだ じゃ、アイスを食べた記憶をたどろう …………あっ、覚えているのはソフトだ 両親が共働きだった頃の幼稚園の私 毎週土曜日にお金を貰って、今で言うジ○スコみたいなところに一人で行き、ソフトを買って食べた記憶がある 今考えれば恐ろしい 幼稚園児が一人で信号を渡って店に入りソフトを買うなんて 味……正直覚えていないけど美味しいとは思わなかった たた、人が居る場所に行きたかったのだろう 今とは大違いだ そして小学生 おばあちゃんが癌で入院した 夏休みだったので私と母親は病院で寝泊まりしていた 今でも覚えているのは病院の匂い 田舎の小さな病院だった おばあちゃんは手遅れだった 手術をしないまま好きな物を好きなだけ食べさせてあげた そこの病院の匂いは独特で、甘ったるいようなしけたようなとにかく好きな匂いではなかった 近所にある店でパンを買うと必ずお腹を壊した 昔は今ほど衛生面に気を使っていなかったのか、夏だからなのかはわからないがとにかく病院に居る間中、私のお腹はお祭り騒ぎだった 正直早く帰りたかった 病院は宮崎にあった もちろんエアコンはない 暑さで限界な私は毎日階段に座って一日過ごしていた 知らない場所の 知らない病院 私はおばあちゃんを余り知らない 夏休みにたまに遊びに行くぐらいだった 母親の田舎が宮崎 父親の田舎が岩手 子供の私はそんな田舎の方言が全くわからない まるで外国 特におばあちゃんの話は全くわからない しかし、母親は宮崎に帰ると標準語からいきなり宮崎弁になる 不思議な感じだった そんなある日、かなりだれていた私は暑さの限界によりついに階段に寝そべっていた 今考えると恐ろしい でも階段が一番涼しく感じた 親戚のおばさんがアイスをくれた 私はお腹がお祭り騒ぎなので食べる気が起きないままぼんやり紙袋を見つめていた
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