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というわけで、緊急家族会議が開かれた。ただ起こすだけなのにかなり大袈裟ではないか、と思うだろうが、ここまで大事になってしまっている原因は黎明の朝の弱さにある
「…さて、誰が起こしに行くか、だが」
どこかの色眼鏡掛けたおっちゃんみたいな格好で座っている義之。音姫もいつもの笑顔は消え去り、真剣な表情となっている。そんな二人の異様な雰囲気に、由夢は緊張と困惑を隠しきれずにそわそわとしていた
「…そんなにすごいんですか、黎兄さんの寝惚け方って」
「うん、あれはもう……筆舌に尽くしがたい程だよ」
「ってあれ?由夢って一度も黎兄ぃ起こしに行ったこと無かったっけ」
深く深く頷きながら由夢の問いに答える音姫。義之はそんな由夢の質問にふと疑問を感じ、由夢に問い掛ける
「うん、無いです。いつもお姉ちゃんか兄さんが起こしに行ってたから…」
由夢のその発言を聞いて、思考する義之。そして音姫に提案する
「……やらせるか?」
「由夢ちゃんに?うーん……でもまだ早くないかな。当たりだったらいいけど、もし外れたら……」
「でもこの辺で一回経験させとかないと、突然こんな状況になったときにハズレ引くよりはマシだろ?」
「それは確かにそうだけど……。うーん………わかった。頼むよ由夢ちゃん!」
「本人に確認とらずに決めちゃったよこの姉!」
「大丈夫!お前ならいける。俺は今日日直だからもう行かなければならないが……黎兄ぃの目が座ってたら、要注意だぜ」
「このタイミングでその憂いを帯びた凄まじく良い顔と不吉なアドバイスをする理由はなんなんですかっ!?」
「私も生徒会の用事があるからもう出るけど…由夢ちゃんならきっと生きて帰ってこれるって……信じてるから」
「重いっ!私は戦地へ赴く医療兵ですかっ!」
「まぁそういうわけだから、頼んだぜー!」
「や、まだ誰もやるとは…って待ちなさーい二人共ー!!」
言うが早いが、あっという間に家を出ていった二人。取り残された由夢は一人、ため息を吐いた
「…そんなにひどいの?黎兄さんの寝惚け方って」
確かに、起こしに行った義之や音姫が時々黎明に抱えられて現れる姿は何度か見てる。理由を聞いても黎明は知らないと言うし、二人は何も言わないし
「…百聞は一見にしかず、ですね」
少し緊張しつつも、由夢は黎明の部屋へと向かった
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