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というわけで、黎明の部屋の前まで来た由夢。少し躊躇ったが、意を決してドアをノックしてみる
「…反応がありませんね」
由夢は小さくため息を吐いた後、よしっと気合いを入れるとドアを開けて、部屋へと入った
「お、おじゃましまーす…ってあれ?」
部屋に入って真っ先に目に入ったもの、それはベッドに腰掛けてこちらに背中を向けてぼーっと窓の方を見ている黎明の姿だった。良かった、さっきのノックで起きたんですね。何だか呆気なかったなぁと思いながら黎明に近づく由夢
「黎兄さん、朝ですよ。早くしないと、遅刻しちゃうよ?」
「………ん」
そう背中越しに声を掛けると、黎明はゆっくりと振り返って由夢の方へ顔を向ける。その目は、おもいっきり座っていた
黎兄ぃの目が座ってたら、要注意だぜ―――そんな義之の言葉が由夢の頭に浮かんだ瞬間
いつの間にか黎明の腕の中にすっぽりと収まっていた
「…へ?………え、ええっ!?れれれ黎兄さん!!?」
突然の出来事に軽くパニックになる由夢。顔を少し赤くしながらも振りほどこうともがくが、全く振りほどけない
「……由夢」
と、その時、黎明に名前を呼ばれて。顔を上げるとすぐそばに黎明の顔が。視線が交差しあい、そして黎明が口を開く
「……くす、つかまえた」
「――――っ!!?」
普段なら絶対、天地がひっくり返ってもしないような柔らかな微笑み、そして溢れ出る凄まじき妖艶な雰囲気。由夢は全身が火照り、形容しがたい何かが駆け巡るのを感じた。これは……ヤバイ。目を剃らそうとするも、全く顔が動かない。それどころか逆に見入ってしまう。その顔に、目に、唇に。
「あ、あうあうぅ……」
「…どうした?熱でもあるの?」
黎明はそう言うと、自らの額を由夢の額にくっつける。寝呆けてはいるが、その行為は妹を心配する兄そのもの。ただ言うならば
「~~~っっ!!?……きゅぅ」
タイミングが悪かった。限界だったのだろう、顔をこれでもかというくらい上気させた由夢は、あっけなく意識を手放した。手放す直前、由夢は思った
…これ、何て無理ゲー……?
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