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「………ん」
パチり、と由夢は目を開けた。身を起こすと、はらりと体にかかっていた厚めのタオルケットがベッドに落ちる。………あれ、黎兄さんの部屋だ。何で私………。そこまで考えて、先程の記憶が蘇ってきた。瞬間、顔が熱くなる由夢。……ってそれどころじゃない、時間は?早く学校行かなきゃ……!そして時計を見ると
「……マジですか」
既に十二時をまわっていた。……どんだけ気絶してたんだ私。軽く落ち込みながら、そして今さら違和感に気づく。あれ、黎兄さんは?………学校、行ったのかな。………まぁいいや。とりあえず下に降りよう。そう思って軽く服を整え、部屋のドアを開けると
「……ん?」
何やら、美味しそうな匂いが漂ってきた
******
「おぅ、起きたか由夢」
下に降りると、キッチンで黎明が料理をしていた。その隣に行き、何を作ってるのか覗き込む。どうやらチャーハンらしい
「黎兄さんはいつ起きたんですか?」
「んー、一時間くらい前だな。起きたら由夢が俺の隣で寝てたからな、少しびっくりしたよ。…何で寝てたんだ?」
あんたのせいだよ!と心の中で叫ぶ由夢
「ま、まぁ色々ありまして……ほら、たまには黎兄さんと寝てあげてもいいかなーって」
と、少しからかい気味に言ってみるがそんなからかいは黎明には通用しない
「たまにはじゃなくて毎日来てもいいんだぜ?由夢あったかいし」
チャーハンを皿に盛り付けながら見事なカウンターを返すと由夢はしどろもどろになってしまい、照れ隠しに手痛い一撃を鳩尾にくらった
******
「「いただきます」」
二人同時に合掌。そしてパクり
「……相変わらず美味い」
「うむ、気に入ってくれたようで何よりだ」
「それに……なんか、すごく食べやすい気がします」
「お、よく分かるな。前回作った時なんか物足りなさそうな表情してたからちょいと味付け変えてみた」
「…そんな表情、したことないですよ私」
「してなくても分かるんだよ。お前の兄だからな。ほら、冷める前に食べてくれ」
「はーい。黎兄さんもちゃんと食べて……ってもう器が空だっ!?え、いつの間に?」
「喋りながら」
「何その変な技術!?」
「これを聖徳太子戦法という」
「言わないよっ!」
そうして賑やかに、昼食は進んでいく
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