理想と現実

2/5
前へ
/419ページ
次へ
「純ちゃん!ねえ、聞いてるの?」 結衣にそう声をかけられて、ハッとした。 「あ……あぁ、ごめんごめん……何?」 「何?じゃないでしょ? さっきからずっとボーッとしてるよ? なんかあったの?」 やべっ……俺、そんなにボーッとしてたのか…… 「いや、何もないよ?」 テレビに視線を移しながら、とりあえずごまかすようにそう言った。 結衣は納得してないような顔で、それでもしぶしぶ引き下がる。 ダメだ…… 俺、課長の奥さんのことばっかり考えてる。 一度会ったきりの、しかも上司の奥さんにこんなに心を奪われるなんて思ってもいなかった。 はぁ……と大きく溜め息をつくと、結衣がこちらをチラッと見る。 俺は何か言われる前に、キッチンでコーヒーでも淹れようと立ち上がった。
/419ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1300人が本棚に入れています
本棚に追加