序章

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ファックスが届いたのは、ちょうど昼飯を食べ終わった頃だった。 主任がそのぺらぺらのファックス用紙をまじまじと見た後、適当に丸めてごみ箱に投げた辺りで声をかけた。 「主任……また十二番目ですか」 出来るだけ優しく話し掛けたつもりだったが……どうやらこの主任はかなり参ってしまっているらしい。 物凄い形相でこちらを向いてきた。 なるほど、ここまで神経質なら禿げる訳だ。 「……ああ、君か……脅かさないでくれ」 「脅かすつもりは微塵も無いですよ」 そうか、と胸を撫で下ろす主任の指を見ると、殆ど深爪になっているのが分かる。 恐らく極度の緊張によって無意識に噛んでいるのだろう。 ……所の最高責任者としてどうかと思うところだ。 「ふぅ……で、十二番目がどうしたって?」 なるほど、この主任様は毛だけでなく記憶も抜け易いらしい。
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