芋女

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芋女は一瞬目を見開いて、微笑んだ。さっきの寂しい笑顔ではなく、何かを決意したような笑顔で…。 しばらくして俺達は学校を出た。 気がついたらすっかり外は薄暗くなっていた。 俺達は並んで道を歩く。 「なんかごめんね、急にあんな話して…」 芋女は苦笑いで俺に告げた。 「…いや、別に…」 「…でも…なんかスッキリした!ありがとね!……っと、あんた名前なに?」 「…神崎周平……お前は?」 俺はちゃんと名前を聞きたくてそう告げた。 「…近藤夢!って…なんか…名前も知らないのにあんな話してたんだあたし達…」 「…確かに」 俺達は顔を合わせる。 「…プッ!」 「あははっ!」 俺達は同時に笑った。 ふと、笑っている芋女を何気なく見る。 …っ! とくんっ まただ…。この感覚。 そういえばこいつの笑った顔、初めて見た…。 俺は見たことのない芋女の笑顔が眩しくて思わず目を細めた。 俺はなぜか胸が締め付けられる。 しばらく見つめていると視線に気づいた芋女は 「…何よ!」 と、少し強気な顔をして言った。 「……いや…クスッ……なんでもねぇよ」 「ちょっと!なによー!気になるじゃん!」 それから俺達は他愛もない会話をして別れた。
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