プロローグ

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だが心配はいらない。学校はすぐ近くだ。だからこの高校を受験したのだけれども。とにかく、5分あれば走って間に合う距離に俺は住んでいる。八時半までに登校をしなければいけないから、八時二十分に家を出れば間に合うだろう。 いつも大体そんな感じで登校し、遠くから遅刻を逃れるために走ってきた奴らが、ゼェハァ言っているのを見ている。 そして今日もいつもと変わらないと思っていたのだが、一つだけ異なる点があるのだった。 遅刻寸前メンバーの中に知った顔を発見したのだった。俺はこれにおかしさを感じた。 なお、その人の名前は笹野静音(ささの しずね)といい、自分のクラスの委員長である。その性格はかなり真面目であり、クラスの一部からは鬱陶しがられているほどだ。 そんな彼女が遅刻ギリギリの登校。これには違和感を感じずにはいられない。明らかにおかしい。 だがそんなことも言っていられない。俺も遅刻ギリギリメンバーの一人だ。モタモタしてはいられない。 俺はそんな彼女を後ろでチラリと確認した後、先を急ごうとする。 「っと…」 だが、目の前に大型トレーラーがやって来た。 大型トレーラー? 俺はそれに既視感を感じていた。それと同時に悪寒も感じていた。 急いで後ろを振り向いた俺は、笹野のところにまで駆け寄る。 案の定彼女は大型トレーラーに気が付かず、このままだと彼女は大型トレーラーに轢かれてしまうだろう。 何故気が付かなかったのか、何故俺がこんなことをしたのかは理解できないのだが、俺は急いで彼女を自分の方…安全な方へと引き寄せた。 「!?」 突然背中を掴まれてびっくりしたようだが、トレーラーの過ぎる音が聞こえると、彼女は俺の行動の意味に気が付いたようだ。 「気をつけろよ」 「あ、ありがとう。時田君」 彼女が俺の名前を覚えていることは少し意外だったが、感謝されて嬉しくない訳はなかったので、あまり気にしなかった。 「いや…とりあえず早くしないと遅刻するぞ」 俺は彼女を置いて先に学校へと向かった。 「あ…」 彼女は何か言いかけたようだが、俺はもうこの場にいたくなかった。 生来恥ずかしがり屋である俺は、目立つことは好きではないのだ。 そして俺は何事もなかったかのように登校し、入室し、着席した。 そしてそんな俺に近づく影二つ。 「よう」 「相変わらず遅刻ギリギリね」 俺の前に現れたのは男女二人組であった。
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