プロローグ

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遅刻寸前メンバーの中に知った顔を発見したのだった。俺はこれにおかしさを感じた。 なお、その人の名前は笹野静音(ささの しずね)といい、自分のクラスの委員長である。その性格はかなり真面目であり、クラスの一部からは鬱陶しがられているのだ。 そんな彼女が遅刻ギリギリの登校。これには違和感を感じずにはいられない。明らかにおかしい。 だがそんなことも言っていられない。俺も遅刻ギリギリメンバーの一人だ。モタモタしてはいられない。 俺はそんな彼女を後ろでチラリと確認した後、先を急ごうとする。 「っと…」 だが、目の前に大型トレーラーがやって来た。 珍しいことだ。ここは通学路であり、滅多なことではこんなものはやって来ない。 「…ん?」 俺は何か嫌な予感を感じ、その場に立ち止まって後ろを振り向く。 ちょうど彼女が大型トレーラーの前に出ていった。止まっているトラックが死角になっていて、彼女はトレーラーに気が付かなかったのだ。 「っ…!」 何故か俺は急いで彼女の方へ走り、彼女を突き飛ばす。とりあえず大型トレーラーの進行路線から彼女は外れたようだ。 ブーーーーーー! 「あ」 だが、代わりに俺が路線に侵入してしまった。 大型トレーラーのクラクションも虚しく、俺は大型トレーラーに跳ね飛ばされた。 不思議と痛みは感じなかった。即死だったのかもしれない。 でも何だか冷静にものを考えられる。何故なんだろう? そういう疑問を持ったところで俺の意識は無くなった。 5月16日午前8時22分。享年16歳で時田進死亡。死因、交通事故。 その顔はとても酷かった。 何度も鏡で確認するが、これは酷い。何か無理やり起こされた感じの顔である。 ただ、今家には誰もいないはずだ。姉は大学のサークルの集まりがどうとかで、叔父はすでに仕事に行っているはずである。 つまり、俺は無理やり起こされた訳ではない。いや、正確にいえば、誰かに起こされた訳ではない。犯人は床に転がっている目覚まし時計だろう。 …あれ? 何かおかしくないか? ものすごく頭がガンガンするし、まるで命を奪われる夢でも見たみたいだ。 俺は少し気味悪さを感じながらも、いつもの朝を満喫することにする。 すでに出ている朝食を食べ、歯を磨き、着替えを済ませる。そして見事に遅刻ギリギリの時間。
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