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空へとむけて呼び掛けた返事が
すぐ後ろからあり
沖田の身体は大袈裟な程飛び上がった。
震えの治まらない手を
咄嗟に身体で隠す様に振り返れば
沖田を心配そうに伺う近藤が立っていた。
沖田の声が聞こえていた様子はなかったが
近藤は様子のおかしい沖田への
心配が大きい様で
沖田は何事もないのだと笑顔を作った。
「近藤先生っどうしたんですか?
僕に何かご用でしたか?」
きっと沖田は上手に笑えていただろう。
それはまるで無邪気な子供の様に。
「あぁ…これから組長以上の者達で
会合を開くんだが…
体調が良い様ならお前もこないか?」
沖田の笑顔に近藤も安心したのか
笑顔を沖田へと向けて言った。
一瞬惚けてしまった沖田も
近藤の言葉を理解し
パァと表情を明るくした。
ずっと遠ざかっていた隊務への
復帰の誘いだ。
それも誰でもない
近藤からのもの。
何よりも望んでいたその誘いに
喜びを隠すわけもなく
迎えにきた近藤を逆に急かしながら
屯所へと戻った。
沖田の背中に
近藤は暖かい笑みを向けていた。
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