序章

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ドサッと吉田の身体は その手から槍が抜け落ちるのと同時に 地面へと倒れた。 室内で始まった二人のやり取りは激戦となり 二人も気付かぬうちに 池田屋の中庭に場所を変えていた。 沖田は京に来てから 数多の浪士達を相手にしていたが 幼い頃より鍛えたその剣に かなう相手など居なかった。 ほとんどの者は一刀の元に斬り伏せた。 刀と槍では 槍の方が数段有利だと言われるが それを差し引いても 吉田は強かった。 周りが見えなくなる程 苦戦したのは久しぶりだ。 …いや、初めてかもしれない。 吉田と対峙した当初周りから響いていた刀を交える音も声も もうほとんど聞こえない。 おそらく 事は終わりを迎えようとしている。 もちろんこちらの勝利という形で。 安堵もあり 思っていたよりも沖田は 自分の息が乱れている事に気が付いた。 身体が空気を欲して 胸が上下を繰り返す。
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