序章

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その時 突如“何か”が喉に込み上げてきた。 その“何か”は熱く それが胸から込み上げているのだとわかる。 抑えることも出来ずに思い切り咳込んだ。 いくら咳込んでも治まることなく 次から次へと込み上げてくる。 息をすること出来ない。 あまりの苦しさに涙が滲んでくるのがわかった。 どれだけの間 咳込んだのか…。 助けを求めることも、 その相手も見付けられず ただ咳込むことしか 出来ずにいた。 「総司っっ!?どうしたっ!?」 永倉新八が咳込む声を聞きつけ 沖田に駆け寄り背中を擦る。 永倉は竹刀タコのあるゴツゴツした手で力強く しかし沖田を気遣い優しく背中を 何度も何度も擦ってくれた。 しばらくすると自然に咳は治まり 沖田は口元を覆っていた手を離した。 永倉に礼を伝えようと顔を上げようとする。 だが自らの手のひらを目にし 沖田は絶句してしまった。
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