序章

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新撰組が世話になっている八木邸の すぐ近くにある壬生寺は 日頃近所の子供達の遊び場となっている。 楽しそうにはしゃぐ子供達を見ていると まるでこの京が動乱の真っ只中だというのを 忘れてしまいそうになる。 池田屋の一件からもう一月も経った。 最初は寝ていろとばかり 言っていた近藤も土方も それ程口うるさくはなくなってきた。 しかし巡察への復帰はまだ出来ておらず 一日中屯所で静かに過ごしている。 …という事になっている。 屯所に籠もっている事に耐えられず 最近は時折抜け出して 沖田は壬生寺で一日過ごしていた。 池田屋で血を吐いたことは 誰にも言っていない。 永倉も何も報告していない様だった。 むしろ何事もなかった様に 沖田に接してくる。 戸惑いながらも自分からそれを 話題に持ち出す事も出来ず そのままずるずると日が経ってしまった。
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