序章

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誰より沖田が一番 血を吐いた事に驚いているのだ。 確かに最近は身体が重く感じたり 咳が出ることはあったが ただの夏風邪だとばかり思い 気にもとめていなかった。 ましてやこの一月 屯所で一日中休んでいて 身体の調子も悪くない。 むしろ良いくらいだ。 だから医者にも行っていない。 近藤も土方も 沖田の医者嫌いを知っているから 池田屋の直後には 無理矢理連れて行こうともしていたが どんどん日頃の調子を 取り戻す沖田をみていて 安心した様に 無理強いはしなくなった。 だが沖田だって子供じゃない。 血を吐くというのが どんな事かわからないわけじゃない。 …労咳かもしれない。 まだ幼い頃 母は労咳で亡くなった。 京に来てからも一番隊の平隊士が一人 労咳で離隊になった。 母の事は幼かったゆえ それ程はっきりとは 覚えていないのだが 二人共たくさんの血を吐いていた気がする。 池田屋の時の自分の様に。
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