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彼女には一人の姉がいる。産まれた時間が一時間程早い双子の姉、名前はリリア=レイフィン=クロイツェル。彼女もまたハーブティーを堪能する少女と同じく王家の血を受け継ぐ者であり、少々放浪癖のある使用人達の悩みの種なる存在。
「それは困りましたね。あれほど外は危ないので城から出てはいけませんと念を押しましたのに。話を聞いた以上捜索を行いますが宜しいですか? フィリア様」
男はシーツを綺麗に折りたたみ、少女のドレスの選定をしながら溜め息を吐く。しとやかな色から派手な色彩のものまで十数種に及ぶドレスの中から、使用人は薄いイエローグリーンのそれを手に取った。
「ええ。まぁ、お姉様が簡単に捕まるとは思いませんけどね。あ、それと一つお願いしてもいいですか?」
「お願い、とは?」
「下街にあるメイリンというお菓子屋さんのシュークリームを買って来てください。あそこのお菓子は美味しいんです」
彼女は小さく微笑む。長い亜麻色の髪が揺らぎ、民衆から天使の生まれ変わりと謳われるその容姿は誰が見ても癒され見とれることだろう。
「まったく、フィリア様も同様に曲者ですね。まさか、シュークリームを買ってくることを条件にリリア様を見逃したのですか?」
「さぁ、どうでしょう。私はシュークリームを食べることが出来ればどちらでも構いませんから」
先程と変わり、小悪魔が見え隠れする笑顔に使用人は本日二度目の溜め息をつくことになった。
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