序章

2/2
前へ
/259ページ
次へ
白銀ノ髪を靡かせ、少年は紅イ瞳で月のない夜空を見上げていた。 少年が軽く空気に触れると、ピシピシと空間が壊れる。 少年は自らの力を持て余しているようだった。 少年は急に視界がぶれたのに気が付いた。 暖かいものが目から出て、少年の頬を滑り落ち、顎の先端まで行くと雫になって落ちた。 舌で舐めとったそれはしょっぱくて……。 少年はそれを『涙』だとは知らなかった。 枯れたものだと思っていたからだ。 後から後から止め処なく溢れ出てくる水は、少年を困らせる。 少年には、何故自分が泣いているのかさえ分からないのだから―――。 涙をこぼさないよう、少年は再び夜空を見上げた。
/259ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加