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白銀ノ髪を靡かせ、少年は紅イ瞳で月のない夜空を見上げていた。
少年が軽く空気に触れると、ピシピシと空間が壊れる。
少年は自らの力を持て余しているようだった。
少年は急に視界がぶれたのに気が付いた。
暖かいものが目から出て、少年の頬を滑り落ち、顎の先端まで行くと雫になって落ちた。
舌で舐めとったそれはしょっぱくて……。
少年はそれを『涙』だとは知らなかった。
枯れたものだと思っていたからだ。
後から後から止め処なく溢れ出てくる水は、少年を困らせる。
少年には、何故自分が泣いているのかさえ分からないのだから―――。
涙をこぼさないよう、少年は再び夜空を見上げた。
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