アメリカ、危機一髪、献杯

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「――アメリカが謎の生命体集団から襲撃を受けたことを皮切りに始まった世界的防衛戦は幕を閉じました」  司会者でもある初老の老人が通訳を脇に立たせながらスピーチをしている。 「しかしながら、せまりくる脅威を退け、我々がこうしてここに立っていられるのは全て彼らのおかげです!」  老人は眼鏡の下の涙をぬぐいつつ後ろの祭壇に手をかざした。  そこには溢れんばかりの花束と、数え切れないばかりの遺影が飾られていた。  参列者の中からも嗚咽の声がいくつも上がる。参列者は皆、この防衛戦を生き残った兵士たちだ。  広い会場は人で埋め尽くされ、様々な国の軍服を来た兵士たちがそこには並んでいた。 「我々は国境を越えて協力し、この危機を乗り越えました。だからこそ我々は、今後も手を取り合い未曾有の危機が二度と起きないように! 世界の平和を守るために! 一致団結していかなくてはならないのではないでしょうか!」  参列者から大きな拍手が沸く。老人は壇上のグラスを取ると言った。 「彼らたちに。献杯」  参列者も持っていたグラスを空ける。 「ぐぼぁはぁっ!」  突如、老人が壇上に手をかけながら倒れる。駆け寄る警備たち。  会場はあっという間に騒然となった。 「確かに我々は敗北した。こうして生きているのは奇跡に近い。まさに危機一髪だった」  私は騒ぎを悠然と眺めながら一人つぶやく。 「でも、次はそうはいかない」  手元のスイッチを押すと同時に会場のいたる所で爆発が起こる。 「これは我々からのリベンジマッチの招待状だ」  そして、私は人間に擬態した姿のままぎこちない笑顔で言った。 「さあ、世界第二次防衛戦を始めようじゃないか」
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