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闘技場に向かうと、すでに大勢の人間がつめかけていた。
「機嫌悪いみたいだけど、どうしたの?」
「別にそなたのせいではない」
開幕まで時間はまだあるというのに、この人だかり。
忙しいことだ。
だが、目下一番に気に入らないのはそんなことではない。
人間より聴覚がいいせいで、聞こえてしまった耳障りな声。
「おい、見ろよ……」
「ああ」
その発生源から向けられている視線の先にはアイリスが。
(ちらちら、チラチラと!)
アイリスに視線を向ける男共が気に食わん!
元王国の王女だったせいか、本人はまったく気に留めていないようだが。
アイリスはそこらの人間より強いし、万が一はないとは思うが……
試合中に誰かに絡まれている姿など、見たくもない。
しかも今の私は魔術が使えない状態だ。
遠距離の牽制などできるはずもない。
そんな状況で、アイリスを一人で観客席に向かわせるなど、断じて認められん!
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