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◇◆◇
剣が打ち合う音の中、突如何かが降ってきた。
――ドシャッ!
「なっ!?」
『おおっと、これはどうしたことか!突然場外に人が降ってきたぁーーっ!』
処分に困ったアイリスが、場外の真上まで運んだんだな。
物を浮かせるレビテーションの呪文で。
だが、さすがにいくら死なないからといって、3mの高さから落とすのはどうかと……
「運がなかったな」
「ちっ……」
同情はしないが、人質に取る相手が悪すぎだ。
まあ、これで心置きなく戦えるわけだが。
「まだオレの負けが決まったわけじゃねぇ!」
大振りのその一撃の反動を利用し、私は相手の剣を弾き飛ばした。
その後のフォローも忘れない。
「形勢逆転だな。ご希望なら場外に出してやるが……降参とどちらがいい?」
「けっ……降参だ」
『決まりました!グラシエール選手、たった一度の攻撃で勝利を手にしました!』
拍手と歓声が上がる。
今の姿こそ人間だが、魔王の私が大勢の人間に賞賛される日が来るとはな。
人生、何があるかわかったものではないな。
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