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どうにもこうにも、やはり6分でケリをつけるのは無理らしい。
(どうする?)
降参、というのも手ではある。
しかし独断でそれはできない。
とりあえずアイリスの方を見やると……
観客席に彼女はいなかった。
(まさか……)
そう考えた瞬間だった。
「余所見している場合か?」
「そういう場合だ」
「何……!?」
私の意外な言葉に、ようやく周囲の変化に気づいたらしい。
『おおっと!?突如、霧が出てきました!しかも、だんだん濃くなってきているぞーっ!?』
『これは魔力によるものですね。少し濃すぎますが、そう長くは続かないでしょう』
場内待機のアナウンスが流れる。
その間に、霧は一気に闘技場全域を包み込んだ。
「くそっ、視界ゼロだ!」
ぶつかり合いの戦いも、これでは不可能だ。
だが、こちらとしては助かった。
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