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◇◆◇
試合が終わった後、私はアイリスの回収に屋上へ向かおうとした。
が。
よりにもよって、アイリスを抱き上げた体勢でアイツがやって来ていた。
「大活躍だね、グレイサー」
「マーシー……」
千年来の腐れ縁にして我が親友。
白翼族の長、マーシー・ルヴァッソール。
「事後処理は一応しておいたけど、彼女も無理をするねぇ」
「……私のせいだ」
「自分を責めるのはキミの悪い癖だね」
「………」
そうは言われても、私の迂闊さがこの事態を招いたのは事実だ。
時間配分を疎かにしなければ……
対戦相手のレベルに合わせて手加減をしていなければ……
こんなことにはならなかった。
「とりあえず……はい」
「あ、ああ」
差し出されたアイリスを受け取ると、その軽さに驚いた。
もちろん人間としてそれなりにはある。
だが、少し軽すぎる気が……
いやしかし、これはこれで……
「いつまでつまらないシンキングタイムを続ける気だい?」
「!!」
鋭い視線が全てを物語っていた。
病人相手に何を考えているんだ、と。
(一応、やましい考えではないと思う)
もう少し全体的に肉付きのいい方が、抱き心地がいいかと……
断じてそれだけだ。
「……アイリスに体重について何か言ったら、問答無用で上級魔法が飛んでくるよ」
「…………」
――それは、とても簡単かつリアルに想像できるシーンだった。
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