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◇◆◇
準決勝戦は特に問題もなく、勝ち進んだ。
「……余裕そうだな」
「アルフレッドか。次はお前の試合だろう?」
「問題ないさ。決勝で会おう」
颯爽と去っていくアルフレッドの背中を見送ることなく、私は控え室に戻った。
(自信に満ちているのは結構だが……)
私は優勝してはならない。
たとえ自分のプライドを捨てることになろうとも。
たとえアルフレッドのプライドを傷つけようとも。
それだけは、守らなければならない。
勇者に勝たないことが、魔族と人間の共存条件だ。
そのルールがなければ、魔族と人間の間で大戦争が勃発していただろう。
気にしすぎかもしれない。
だが、いくら王国のトップを巻き込んだといっても、あくまで被害が最小だっただけだ。
魔族と人間の関係が良好になったわけではない。
私は大局を優先しなければならないのだ。
だが――
アイリスは納得してくれるだろうか?
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