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「おかしなぁ…武市さん、おらへんのかな」
部屋の中を覗いてみたあと、うちは襖を閉めて、溜め息を吐いた。
さっき、玄関に長州藩邸のお使いの人が来て、武市さん宛の手紙を渡された。
長州ってことは薩長同盟がらみの内容やろし、大事な手紙やとあかんから、急いで部屋まで持って来たんやけど……
どこかへ出掛けてしもたのか、部屋に武市さんの姿は無かった。
「机の上とかに置いといたら分かるかな…ん?」
うちはふと、手紙に書いてある宛名に目をやる。
「…何やこれ。名前、違ごてるやん」
名字は、確かに『武市』って書いてある。
でも下の名前が…にょろにょろしとってよう分からんけど、明らかに『半平太』やない。
あのお使いの人、急いどって気付かへんかったんかな?
ど、どないしよ。
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