貴方へ

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卒業式も終わって教室に戻った俺たちは、最後に担任の話を聞いていた。俺たちがこの学園に初めて入ってきたときの話を聞いた所で、俺は彼女に初めて会った時の事を思い出していた。 ――― 俺は中学卒業と同時にこっちに引っ越してきた。仲の良かった友達と離れるのは嫌だったし、知らない土地に対しての不安もあった。だけど、もうどうにもなら無い事だしと諦めていた。 とりあえず新しく入る予定の高校まで歩いてみよう。と、思ったまでは良かったのだが… 「あれっ?さっきもここに来たぞ…」 どうやら迷ってしまったらしい。試験の日には親に送ってもらったので道はあまり覚えていなかったが、地図を見ていけば大丈夫だろ、と思っていた。 やべーな… どうするかな… 本格的に迷い、とりあえず地図をひろげて目印となる物を探していた。 「もしかして春桜学園ですか?」 地図に集中していた俺は、人が近づいていた事に全く気づいていなかった。 「あ、うん」 目的の場所を言われ頷く。多分学ランでこの辺りをウロウロしてるからわかったんだろうなと思い、学ランを来て出た今日の自分を褒めた。 「なら、ここを曲がって上り坂を上がって行けば着きますよ」 「あ、ほんと?ありがとう!」 教えて貰った所、曲がり角で振り向き手を振りながらもう一度、感謝の言葉を伝えた。 彼女も手を振りながら、凄く綺麗な笑顔を俺に向けてくれた。その笑顔は、頭からいつまでも離れなくなっていた。 ―― 彼女は始めてあった時の事を覚えていなかった様だった。ちょっとがっくりとしたがそれでも機会を窺っていたのは、きっとその時から彼女に惹かれていたのだろう。 知らず知らずのうちに笑みを浮かべてしまう、担任の話は全く聞いてなかった。  
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