手。

2/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
ふと目についた彼の手が気になった。 正確に言えば、肘から指の先まで。 とある小説で、手を切り取って集めるという異常者の話があった。 今の私の感覚はその異常者に近いかもしれないと思った。 別段その異常者のように手を切り取って集めようなどとは思わない。 寧ろ、感覚は近いが正反対の事を思う。 その異常者は手にしか生命を感じない。 しかし私は、逆にその手がまるで彼のモノとは別の、死んだ手のように思えた。 私自身の手を見ていても、偶に同じような事を思う。 この手はもしかしたら自分の手では無いのかもしれないと… そうなってくると、世の中の人間全ての手がそうやって見えてくる。 もし人が亡くなる時、私は手から先に動かなくなって亡くなるのだと思っている。 意外と脳というのは、死を迎えてもしばらくは機能している…と、どこかで聞いた気がする。 やはり、人間というのは手から先に死ぬのだと勝手に解釈した。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!